ヨナグニマルバネクワガタ、乱獲で生息数100分の1に!
与那国島にのみ生息し沖縄県版レッドデータブックの絶滅危惧Ⅰ類に分類されているヤエヤママルバネクワガタの亜種ヨナグニマルバネクワガタが乱獲などで生息数が元の100分の1に激減したとみられることが分かりました(下地幸夫,沖縄生物学会2008年6月)(下地幸夫,野生生物保護学会2009年7月)。
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本亜種を捕獲して昆虫標本業者に卸していた住民の1989年から2006年までの捕獲数と売り上げを記録したノートを調べました。捕獲数について、1990年に約600頭捕獲されていたのですが、その3年後の93年には約200頭、さらに3年後の96年には9頭と捕獲数は急激に減少しました(毎年捕獲努力は変わらないという条件下)。ヨナグニマルバネクワガタは3年周期で世代交代を繰り返します。それで毎年連続して親となる虫を可能な限りに捕獲したことで 次の3年後、また次の3年後と次世代数が3年毎に下降階段状に減少したと言えます。狭い生息場所ですからその影響は大きかったと考えられます。その後の捕獲数は、97年に57頭、98年10頭、99年16頭と低いままで、そして00年から06年の7年間のその数字は一桁台を推移しています。実際にはどれくらいの数が生き残っていたのか分からないのですが、これらの捕獲数を基に計算しますと2007年現在の生息数は大量捕獲前の1%以下と推定できました。
さらに生息場所の自然林伐採や公園化などの公共事業による森の消滅が本亜種の減少に追い打ちをかけていることはほぼ間違いありません。また、この公共事業による環境破壊に加え個人的な捕獲方法にも言及されるべきです。網を振って捕獲するレベルの一般的な昆虫採集方法程度では昆虫が絶滅するとは考えにくいのですが、確認した限り本亜種の幼虫が生息する樹洞のほとんどは破壊され、そこにあったはずの腐植土が幼虫ごと採集されていたので、これでは繁殖しようにもできない状態になっています。繁殖できる環境を保全さえすれば、この虫の雌は100個程度の産卵能力があるので、個体数がここまで落ち込むことはないはずです。
今回報告された本亜種の減少は、大量捕獲という採集圧に環境破壊が相まった結果と言わざるを得ません。ヨナグニマルバネクワガタは、小さい島の狭い地域に限定的に生息する琉球列島地史を物語る生き証人的な昆虫です。絶滅してしまうのは日本固有の財産として大きな損失になります。見境ない大量捕獲や生息地を破壊する行為(公共事業)は慎まなければなりません。